足球彩票6年(2024年)11月13日(水)、共通科目「新熊本学:ことば、表現、歴史」の特別講義を本学小ホールで開催しました。
講師は、本学客員教授であり、熊本日日新聞編集局長やテレビくまもとでニュース解説委員を務められた平野有益先生です。今回は、「歴史遺産を大事に 漱石~松山?熊本?ロンドン?東京」をテーマに、スライドを交えながら御講演いただきました。

まず、松山時代は(滞在期間1年)松山中学校(現在の松山東高校)で英語教師を務め、親友正岡子規と俳句に熱中した期間であり、この経験が、小説「坊っちゃん」の舞台となったことを説明されました。
また、熊本では、第五高等学校(五高、現在の熊本大学)の英語教師として4年3か月と長期滞在していること、熊本市内で6軒の家を転々としたことには人気作家でありながら生涯自分の家を持つ余裕が無かったことが反映されていること、学校では非常に難しい英語の試験を作成することで知られていたといったエピソードを紹介されました。

更に、五高に席を残したまま、英語教授法研究のためロンドンに2年間留学するも、本人自身が「最も不愉快な2年間」と回想するほど異文化での生活や体格の劣等感から強度の神経衰弱に悩んだが、気分転換にと当時ロンドンで流行っていた自転車に乗る練習をしていたことも紹介されました。
途中、姜尚中氏の夏目漱石に関する評論を用いて、「漱石の文学は、近代文明への懐疑や不協和を深く捉えた『大人の文学』であり、漱石の生涯は『定住漂白』(物理的には定住しているが、心は常に漂っている)の人生である」と説明されたことが印象的でした。
最後に、「漱石が東京という中心地から松山、熊本、ロンドンという周辺地へ身を置くことで、日本を複眼的に見つめることが可能になったことが名作を生み出す土壌となった」とし、漱石作品は決して古びておらず深く味わいある表現に満ちていると強調されるとともに、自分なりの漱石像を頭に描いて漱石に関わってほしいと述べられました。
本講義は、夏目漱石の人生に触れながら、新たな価値観を見出す絶好の機会となりました。